技術解説

ゴースト・フレアの正体|レンズ内反射の原因と抑える技術

スマホや車載カメラの写りを乱すゴースト・フレアはなぜ起きるのか。レンズ内反射の仕組みと、反射防止コーティング・遮光インキによる対策の考え方を対話でわかりやすく解説します。

聞き手:フレアとゴーストって、写真の話でよく一緒に出てきますけど、実は違うものなんですか。逆光で撮ると白っぽくなるのも、丸い光の玉が並ぶのも、同じ現象だと思っていました。

解説:見た目は似ていますが、レンズの中で起きていることは少し違います。パナソニックの解説によると、フレアは強い光源の方向にレンズを向けたとき、レンズ面や鏡胴(レンズを収める筒)で反射した余計な光が画面にかぶる現象です。画面全体が白っぽく霞んだようになるのがフレアです。

聞き手:では、丸い光の玉みたいに、はっきり形が見えるほうがゴーストですか。

解説:そのとおりです。同じ解説では、ゴーストは「フレアの一種」とされ、レンズ面で反射を繰り返した光が、はっきりした像として写ったものと説明されています。フレアが画面全体を覆うベールなら、ゴーストは画面の中に浮かぶ光の像、という違いです。どちらも原因はレンズの中の反射という点では共通しています。

特徴フレアゴースト
見え方画面全体が白っぽく霞む光源とは別の位置に、輪郭のはっきりした像が写る
主な原因レンズ面や鏡胴で反射した余計な光が画面にかぶるレンズ面で反射を繰り返した光が像を結ぶ

聞き手:なるほど、フレアとゴーストは兄弟みたいなものなんですね。じゃあ、その「反射」自体はどうして起きるんでしょうか。ガラスは透明なはずなのに。

解説:透明なガラスでも、光が屈折率の異なる境界面を通るときには、必ず一部が反射します。次の章で、その仕組みを詳しく見ていきましょう。

レンズの中で何が起きているのか

レンズを重ねた光学系の断面図。入射した光の一部が2つのレンズ面で反射を繰り返し、本来の像とは違う経路でセンサーに届く様子を示す図
レンズ面での多重反射がゴーストを生む経路

聞き手:ガラスの中を光が反射するというのが、まだピンときません。透明なものなら、素通りするだけじゃないんですか。

解説:光にとって重要なのは「透明かどうか」ではなく、「屈折率が変わる境目があるかどうか」です。空気からガラスに入る瞬間、屈折率が急に変わるので、そこで一部の光が跳ね返ります。垂直に入射したときの反射率は、両側の屈折率をn₁・n₂とするとR=((n₁-n₂)/(n₁+n₂))²という式で表せます。これは光学の基礎用語としてまとめられている、よく使われる式です。

聞き手:レンズ1枚だけなら、その反射も1回で済みそうですが。

解説:スマホ用や車載用のカメラのレンズは、1枚ではなく複数のレンズを重ねて構成されています。光学設計の解説記事でも、ゴースト・フレアの主な原因は、レンズ群の各面で起きる多重反射だとされています。入ってきた光の一部があるレンズ面で反射し、その反射光が別のレンズ面に戻って、もう一度反射する。この2段階の反射が典型的な経路です。

聞き手:なるほど、境界面が増えるぶん、反射のチャンスも増えるんですね。2回反射した光は、そのあとどこへ行くんですか。

解説:何度も反射した光は、本来の光の通り道から大きく外れた経路をたどり、最後はセンサーに届きます。本来なら像を結ばないはずの光が、別の経路でセンサーに届いてしまうのが、ゴースト・フレアの正体です。その光が本来の像とは違う位置に写り込み、画質を下げてしまいます。

聞き手:実際に写真の中で見たとき、それがゴーストだとどうやって気づけばいいんでしょうか。

解説:見分け方のポイントを、次の章でまとめます。

ゴーストの見分け方

聞き手:フレアで画面全体が白っぽくなっているだけなら、ゴーストとは区別しにくそうですが。

解説:ゴーストには、フレアにはない特徴があります。太陽のようにとても明るい光源が画面の中や近くにあると、ゴーストは光源とは違う位置に、円形などの決まった形として現れます。つまり実際の光源とは別の場所に、輪郭のはっきりした形が現れるのが目印です。

聞き手:決まった形になるのは、どうしてですか。

解説:レンズ面での反射は、光が通ってきた絞り(光を絞る開口部)の形をある程度引き継ぎます。そのため丸っぽい光の玉や、多角形に近い形の像として現れることが多くなります。画面全体がぼんやり白くなるフレアと違い、輪郭が見える点がゴーストらしさです。

ゴーストを見分けるポイント

  • 実際の光源とは離れた位置に、輪郭のはっきりした像が現れる
  • 丸形や多角形など、絞りの形に近い形になりやすい
  • 画面全体がぼんやり白っぽくなるだけなら、ゴーストよりフレア寄りの症状

聞き手:撮影する側からすると、見分けられても防ぎようがない気もします。部材の側で対策する方法はあるんでしょうか。

解説:大きく分けて2つの方向があります。反射そのものを減らす方法と、余計な光を外に出さない方法です。順番に見ていきましょう。

反射を抑える技術1:反射防止コーティング

ガラス面の断面図。左側は無コーティングで反射光が太く跳ね返り、右側は薄い透明な膜が施され、2つの反射光が打ち消し合って反射光がほぼ消えている様子を対比した図
反射防止コーティングによる干渉のイメージ

聞き手:レンズの表面によく「コーティング」と書いてありますけど、あれが対策なんですか。

解説:そうです。反射防止コーティングは、ガラス面に屈折率の異なる薄い膜を1層以上重ねたものです。島津製作所の技術解説によると、ガラスより屈折率の小さい膜を表面に付けると、全体の反射率はガラスだけのときより小さくなります。膜の屈折率をうまく選ぶと、反射そのものを減らせるということです。

聞き手:膜を足しているのに、反射が減るというのは不思議な感じがします。

解説:ここで使われているのが、光の「打ち消し合い」です。PVEducationの解説によると、膜の屈折率が両側の材料の幾何平均になるように選ぶと反射が最小になり、さらに膜の中での光の波長がちょうど入射波長の4分の1になる厚さにすると、ガラス表面での反射光と膜表面での反射光が逆位相になって打ち消し合います。膜の表と裏、2か所からの反射光をわざとぶつけ合わせて消す、という考え方です。

聞き手:そこまで精密に膜の厚さを管理しているんですね。

コーティングだけでは防げない反射もある

反射防止コーティングが効くのは、レンズ面という「境界」からの反射です。鏡筒の内側やレンズを固定する部品の縁で起きる散乱には効果がおよばないため、遮光という別の対策と組み合わせる必要があります。

聞き手:1層の膜だけで、すべての光の色に効くんですか。

解説:単層の膜は特定の波長でしか反射を完全には消せません。そのため実際のレンズでは、屈折率や厚さの異なる膜を何層も重ねて、幅広い波長・幅広い入射角で反射を抑える設計がとられています。ただし、コーティングだけでは表面での反射は減らせても、鏡筒の内部やレンズを固定する部品の縁で光が散乱するのは防げません。次はその対策です。

反射を抑える技術2:遮光という考え方

左は何も塗っていない面で光が跳ね返る様子、右は黒い遮光層に当たった光が吸収されて消える様子を並べた比較図
左:何も塗っていない面では光が跳ね返る/右:遮光層では光が吸収される

聞き手:コーティングで反射を減らすのとは別に、光を「遮る」対策もあるんですか。

解説:あります。レンズの縁や鏡筒の内側は、そのままだと光を反射しやすい面になっています。そこに黒い遮光インキを塗って、余計な光を吸収してしまう方法です。どれだけ光を通さないかは「OD値」という指標で表されます。

聞き手:OD値というのは、初めて聞きました。

解説:光線透過率(入ってきた光のうち通り抜ける割合)を T とすると、OD値は OD = log₁₀(1/T) で表されます。山本光学の保護めがねの取扱説明書でも、この形で示されています。たとえば OD3 なら、通り抜ける光は1000分の1です。OD値が1増えるごとに、通り抜ける光の量は10分の1になる指標だということです。

聞き手:数字が1つ違うだけで、そんなに変わるんですね。遮光インキは、コーティングの代わりになるものなんですか。

解説:役割が違います。コーティングはレンズ面そのものの反射を減らすもの、遮光インキは鏡筒内部や絞りの縁など、本来光が通るべきではない場所からの迷光を吸収するものです。どちらか一方ではなく、組み合わせて初めて効果を発揮する対策だと考えるとわかりやすいと思います。

対策主な対象効果の考え方
反射防止コーティングレンズ面そのもの屈折率と膜厚を選び、2か所からの反射光を打ち消し合わせる
遮光インキ(OD値で管理)鏡筒内部・絞りの縁など光を吸収し、本来通るべきでない経路の光を減らす

写り・画質への影響

聞き手:ここまでの対策をしても、多少の迷光は残ると思うんですが、それは画質にどう影響するんですか。

解説:画面の一部にはっきり光の玉が写るゴーストだけでなく、画面全体のコントラストが下がる影響もあります。国際規格のISO 9358では、この余計な光を「veiling glare(迷光)」と呼んでいます。英語の原文を訳すと、光学系の像面は本来の結像光だけでなく、コントラストを低下させる余計な放射も受け取るとしたうえで、その原因の1つにレンズ面どうしの間での内部の多重反射を挙げています。

聞き手:つまり、ゴーストとして目に見える形にならなくても、写り自体が眠くなることがあるということですか。

解説:そのとおりです。同じ規格は、迷光の原因として、研磨の傷や不完全さ、汚れやほこり、指紋、油分による散乱、反射防止コーティングの不備なども挙げています。コーティングや遮光が不十分だと、ゴーストという分かりやすい形だけでなく、画面全体の眠さとしても現れるわけです。だからこそ、部材選びの段階での対策が意味を持ちます。

まとめ

聞き手:フレアとゴーストは、どちらもレンズの中の反射が原因で、対策としては反射を減らすコーティングと、余計な光を吸収する遮光の両方が必要、ということですね。

解説:フレアは画面全体を覆う光のカブリ、ゴーストは輪郭のはっきりした光の像で、どちらもレンズ面での多重反射から生まれます。反射そのものを減らす反射防止コーティングと、鏡筒内部の迷光を吸収する遮光という、性格の違う2つの対策を組み合わせることが基本になります。NW では、2018年11月から光学分野の事業に取り組んでおり、ゴースト抑制のコーティング GLC と、遮光インキ HD6 を扱っています。GLC は vivo X100 Ultra、vivo X200 Ultra のカメラに2世代連続で採用されています。取り扱っている技術の詳細は、製品・サービスのページでご紹介しています。

よくある質問

フレアとゴーストの一番の違いは何ですか

フレアは画面全体が白っぽく霞むカブリ現象で、ゴーストは光源とは別の位置に輪郭のはっきりした光の像が写る現象です。どちらもレンズ面での反射が原因という点は共通しています。

反射防止コーティングは、なぜ反射を減らせるのですか

膜の屈折率と厚さを、両側の材料の幾何平均や入射波長の4分の1になるよう選ぶことで、ガラス表面と膜表面からの反射光が逆位相になり、打ち消し合うためです。

遮光インキとコーティングは、どちらか一方で十分ですか

役割が異なります。コーティングはレンズ面そのものの反射を減らし、遮光インキは鏡筒内部などからの迷光を吸収します。組み合わせて初めて効果を発揮します。

OD値とは何を表す数値ですか

光をどれだけ通しにくいかを対数で表した光学濃度の指標です。OD3であれば透過光量がおよそ1000分の1になるなど、数値が大きいほど光を通しにくくなります。

ゴーストが目立たない写真でも、迷光の影響はありますか

あります。ISO 9358でも、レンズ面の多重反射やコーティングの不備が画面全体のコントラスト低下(迷光)の原因として挙げられており、はっきりした像にならなくても写りに影響します。

出典・参考資料

  1. ISO 9358:1994 Optics and optical instruments — Veiling glare of image-forming systems — Definitions and methods of measurement
  2. 光学設計の基礎:ゴースト・フレアの発生メカニズムと対策
  3. レンズの特性:フレア、ゴースト、収差(第十五回)
  4. フレネルの公式と反射率の計算
  5. 単層膜の反射率
  6. Anti-Reflection Coatings
  7. レーザ保護めがね取扱説明書 CE YL-717 エルビウムヤグ

この記事は Corporation NW 編集部が、公開されている資料をもとに AI を使って作成し、出典を確認したうえで掲載しています。対話の登場人物は、説明のための設定です。

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